「会社の理念やビジョンを従業員にどのように伝えたら、理解度が高まり効果が最大化するのだろう」
このような悩みを抱えている企業の経営者や、人事担当者の方も多いのではないでしょうか?
企業の存在意義や理念・ビジョンをお客様に届けるまえに、まずは従業員がそれらを深く理解する必要があるのはご存じのとおりです。
お客様と接するのは経営幹部ではなく従業員であり、従業員が企業の理念やビジョンを体現することで、社会に対して企業の存在意義や本質的価値が明示されます。
だからこそ、従業員に対しての理念やビジョンの提示の仕方に悩みを抱える経営者も多いのです。
本記事では、従業員に対しての理念やビジョンの提示の仕方(インナーブランディング)と、従業員が理念やビジョンを体現したいと思う意欲(従業員エンゲージメント)の関係性について解説していきます。
- 従業員エンゲージメントの重要性や、高めるメリット
- 従業員エンゲージメントを高めるためのインナーブランディングの具体的な施策
これらを理解することがあなたの企業の従業員教育に繋がり、ひいてはお客様に質の高い商品・サービスを提供することに繋がります。
是非、あなたの企業の従業員エンゲージメントが高まった未来を想像しながら最後まで読み進めてください。
エンゲージメントとは
エンゲージメントという言葉本来の意味は、約束・誓約・契約などです。口約束のような軽いモノではなく、「深い繋がりのある関係性」を意味します。
ビジネスにおいては、「対顧客」「対従業員」でそれぞれ違う意味合いがあります。対顧客の場合は、「企業と顧客の深い繋がり」を意味し、本記事の題材である対従業員の場合は「企業と従業員の深い信頼関係」を意味します。
それでは、あるべき従業員エンゲージメントについて解説していきましょう。
今注目すべき従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、「企業と従業員の深い信頼関係」を意味します。言い換えるとそれは、「会社に対する誇り」「仕事に対する誇り」とも表現できます。
従業員の企業に貢献したいという気持ちは、理念・ビジョンを具現化していくための自発的行動を促します。そのため企業は従業員一人ひとりに対して自社の大切な人財であることを示します。そこに生まれる繋がりの深さこそが従業員エンゲージメントなのです。
従業員エンゲージメントとよく混同される言葉として、「従業員満足度」があります。
従業員満足度は、福利厚生や労働環境、働きがいなどに対しての満足度を測る言葉です。
従業員満足度を上げることも業績アップにつながりますが、従業員エンゲージメントを上げることはより業績に直結します。なぜなら、会社に貢献したいという気持ちこそが、行動に繋がるからです。
業績に直結させるために注力すべきものは従業員エンゲージメントなのです。
従業員エンゲージメントを高めるメリット
従業員エンゲージメントを高めるメリットとして、特に大きいものを3つ解説します。
- 会社への愛着
- 業務への理解
- 離職率の低下
従業員エンゲージメントが高まった従業員は、会社への愛着が高まり、業務への理解が深まります。なぜなら、企業の理念やビジョンへの深い理解が、そのまま自らがその会社で働く動機となるからです。どんな目的があって業務をやるのかが理解できてこそ、高い意欲を持って業務に取り組めるのです。
会社への愛着が深まった従業員は、「長くこの会社で働きたい」と思うのが自然です。従業員エンゲージメントを高めることが離職率の低下にも繋がり、より熟練したスキルや経験を持った従業員を育てあげることにも繋がります。
従業員エンゲージメントを高めていくための手法として、インナーブランディング施策を打っていくことが効果的です。
組織強化のためのインナーブランディング
従業員エンゲージメントを高め、顧客に対して企業のブランド価値を高めるうえでも、インナーブランディングが大切です。
インナーブランディングとは、企業の内部に向けておこなうブランディング施策のことです。インナーブランディングをおこなうことは、従業員エンゲージメントを高め、従業員が顧客に対して伝える企業のブランド価値を高める効果があります。
現代において、インナーブランディングが大切な理由について解説していきます。
日本の社会の中での社員の熱意は
近年、日本の社会を取り巻く環境を大きく変化させるできごとや要因が相次いで起きています。
- 人口の減少による、マーケットの縮小
- AI技術の進化
- Amazon・Googleなど巨大プラットフォームの躍進
- 新型コロナウイルスによる働き方の変化・インバウンド需要の消滅
このような時代背景の中で、日本で働く社会人の仕事に対する熱意が下がってきているとの調査結果があります。JTBコミュニケーションデザインが実施した「ウィズコロナ時代のモチベーション調査」によると、「やる気はコロナ禍前より上がった」という回答は21.9%に留まっています。これは、2011年の東日本大震災時の同様の質問と比べて、16.6%低いことがわかりました。
社員の熱意が下がってきている現代において大切なことは、社員が共感できるミッション・ビジョンの提示です。そうすることで従業員エンゲージメントを高めることが、社員のモチベーションアップにも繋がります。
VUCA時代を乗り切るために
2020年代はVUCAの時代といわれています。VUCAとは、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の4つの言葉の頭文字で作られた言葉で、先行きが見えない、予測が難しい時代だという意味です。
VUCAの時代を乗り切る企業になるためには、従業員エンゲージメントを高めることが必要不可欠です。先行きが見えない時代のなか前進していくためには、企業の明確なビジョンが道しるべになります。従業員に対して理念とビジョンを示すことで従業員エンゲージメントを高め、共感・体現してもらうことがVUCAの時代を乗り切る唯一の道なのです。
インナーブランディングによるクレドの浸透
クレドとは、企業全体が大切にするべき信条や行動指針を言語化したものです。本来はラテン語で、志・約束・信条を意味します。
企業の理念と混同されることも多い言葉ですが、理念やビジョンをより具体化したものがクレドです。行動ベースにまで落とし込んだり、何かの意思決定を迫られた場面での判断基準になる言葉となります。
クレドを浸透させるためには、インナーブランディング施策に組み込んで従業員のクレドに対する理解度を高めていくことが大切です。
クレドが求められる理由とメリット
クレドが求められる理由として挙げられるのは、2000年代以降に日本だけでなく世界においても問題視されることが多くなった倫理観の欠如です。
大企業も含めて企業の不祥事が相次いで発覚し、それにより経営破綻にまで追い込まれた企業も多数あります。
企業が社会的責任を果たし、存在意義を明確にしていくための行動指針として、倫理観をもった行動を促すことのできるクレドの重要性が上がっています。
クレドの制定には、以下のメリットが期待できます。
- コンプライアンスの遵守に繋がる従業員の意識改革
- 継続的な人材育成
- 従業員の自主的な行動の促進と、モチベーションアップ
クレドを制定することは、従業員の意識改革に繋がります。クレドとして言語化することで倫理的・法的にブレないまっすぐな行動を促すことができ、従業員の意識が望ましい方向に定められるのです。
行動ベースに落とし込んだクレドを制定することにより、継続的な人材育成や従業員の自主的な行動の促進、モチベーションアップにも繋がります。
人材育成を目的とした研修などは一時的な効果は期待できますが、時間が経つと忘れてしまいがちです。クレドを人材育成のツールとして活用することで、継続的な人材育成が期待できます。また、クレドを行動指針とすることが自主的な望ましい行動にも繋がり、それが従業員のモチベーションアップにも直結するのです。
成功事例から見るクレドの効果
実際にクレドを導入した大企業の成功事例をご紹介します。どのような効果が生まれたのか、注目しながら読み進めてみてください。
事例1 ジョンソン・エンド・ジョンソン
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、Our Credo(我が信条)を全従業員に浸透させています。
Our Credoには、社会・顧客・地域社会・株主の4つを対象に、果たすべき責任が言語化され定められています。
また、Our Credoが制定された1943年以降、社会の変化に合わせてOur Credoの文言も少しずつ変化し続けてきました。
Our Credoの効果が目に見えて世界中にアピールされることになったきっかけは、1982年に起こった異物混入事件です。ジョンソン・エンド・ジョンソンが発売した頭痛薬に毒物が混入し、7人の死者が出てしまったのです。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、クレドに沿った社会的責任を果たすための行動を取りました。推定1億ドルの費用をかけ、頭痛薬の自主回収と徹底的な情報公開をおこなったのです。当初メディアから厳しい批判を浴びていたジョンソン・エンド・ジョンソンですが、費用をかけてでも果たすべき責任行動をおこなったことが評価され、世界中からの信頼を取り戻したのです。
事例2 ザ・リッツ・カールトン
クレドを導入した成功事例としてよく挙げられるのが、ザ・リッツ・カールトンです。
クレドをカード化し、従業員全員に携帯させることにより、多くの自発的な望ましい行動を生んでいます。
まず、入社後のオリエンテーションでクレドカードの内容を徹底的に説明し、従業員に求める行動を提示します。更に従業員は出勤前にクレドカードの読み合わせをおこない、インプットを繰り返すのです。従業員は判断に困る局面に立ったときも、携帯しているクレドカードを読み直すことで、とるべき行動を選択できます。
また、ザ・リッツ・カールトンでは、従業員がお客様のためになると判断した行動に費用が伴う場合は、2000ドルまでなら上層部の決済なく使用できます。クレドがお客様に喜んでもらうことに直結する行動を促し、それによりお客様がリピーターになってくれることを知っているのです。
事例3 楽天
楽天のクレドは徹底的にわかりやすく、行動に落とし込みやすいように作られております。
成功のコンセプトという名称で定められたクレドは、「常に改善、常に前進」「Professionalismの徹底」「仮説→実行→検証→仕組化」「顧客満足の最大化」「スピード!!スピード!!スピード!!」の5つです。
シンプルで覚えやすく、迷ったときの行動指針になります。例えば、2つの選択肢で迷ったときには、「よりスピード感がある方法はどちらだろう」と考えることができるのです。
楽天のクレドは、日常の業務の場面でことある毎に思い出せるほどシンプルなものであり、従業員の望ましい行動に直結するという好例です。
クレド作成のポイントと注意点
クレドは従業員の思考の指標となるものです。判断に迷ったときや従業員として望ましい行動や考え方の模範となります。自社の理念やビジョンに沿った文言を設定することが大切です。
作成手順のポイント
クレドの作成手順は以下のポイントに沿って進めるのが理想的です。
- クレドを作る目的を明確にする
- 従業員へのヒアリング
- 経営者への提案・承認
まずは、クレドを作る目的を明確にします。「なぜクレドを作るのか」「クレドを作ることにより、どのような成果を得たいのか」を言語化し、イメージを固めていきます。クレドを作ることになった背景はそのまま目的となり、改善した未来像が得たい成果となります。
続いて、従業員へのヒアリングです。クレドを日常的に使うのは従業員です。従業員が課題に感じていることや、理想とする姿はクレドの作成に反映できるはずです。出来上がったクレドが従業員の納得いくものになるようにするためにも、従業員へのヒアリングは欠かせません。
最後に経営者へ提案し、承認を得ます。クレドは理念・ビジョンに沿ったものにする必要があります。そのためには、経営者の思いをクレドに反映させる必要があり、作成にも参加してもらうのがベストです。
作成時の注意点
クレドの文言を作っていくうえでの注意点として、「抽象的すぎないものにする」という点が挙げられます。
なぜなら、抽象的すぎるクレドは従業員の行動指針にはならず、自発的な行動を生まないからです。
例えば、
- 社会貢献する
- お客様に幸せを提供する
などは表現が抽象的で行動に結びつきません。「自社の社員として社会貢献するには、どのような文言が理解しやすいか」「自社のサービスを通してお客様に幸せを提供するには、どのような考え方をするべきか」という視点で考えたことを、具体的な言葉にすることが大切です。
また、実際に出来上がったクレドをどのように活用していくかも、作成の時点で視野に入れておいた方がいいでしょう。
クレドは作成するだけでは効果は期待できません。どのように運用していくかで従業員への浸透度が左右され、浸透度が深いほど高い効果が期待できます。
より効果的なブランディングのための映像化
インナーブランディング施策を進めていくうえで、より効果を期待できるのが映像コンテンツを用いてのインナーブランディングです。
映像コンテンツは、活字・静止画と比較すると、視聴者に対して伝えたい内容がより深く浸透します。
映像コンテンツを使ってインナーブランディングを進めていくうえでのポイントを解説します。
映像化はブランディングには欠かせないもの
映像コンテンツは、活字・静止画とは比べものにならないほどの情報量を提供できます。活字で伝えられる情報は文字のみ、静止画で伝えられる情報は文字と1枚の画像のイメージのみです。映像コンテンツは、文字・静止画・動画・音声を組み合わせ、ストーリーを伝えることができます。ストーリーの組み立て方も自由度があり、制作者側が伝えたいイメージを視聴者に伝えることができるのです。
インナーブランディングの目的は、従業員に共通のブランドイメージを持ってもらうことです。視聴者の記憶に深く定着させることができる映像コンテンツは、インナーブランディングの効果を最大化してくれるのです。
内面に働きかける映像化の効果
映像は、視聴者の内面に働きかけることができるコンテンツです。
ストーリーを通して視聴者の感情に訴えかけ、視聴者が動画に対して感情移入する効果を生むことができます。
また、ストーリーを通して視聴者を楽しませられるエンターテイメント性があり、動画コンテンツを観た視聴者が満足感を得やすい手法です。
映像によって発せられたイメージは、視聴者の記憶に深く定着します。あなたも、幼い頃にテレビで観たアニメの方が深く記憶されているのではないでしょうか?
映像コンテンツによるブランディングは、人の感情と記憶に深く根付かせることができるのです。
外部パートナーの活用
より印象に残る映像コンテンツを作成するにあたってはクオリティが大切な要素になります。クオリティを上げるためには「専門的な知識と技術が必要」です。
映像コンテンツは作り手の技術が如実に出やすいコンテンツであり、未経験者が作った映像コンテンツは、残念ながらそれ相応の出来栄えになってしまいます。
自社の従業員だけでの映像制作が難しい場合は、外部パートナーの活用を視野に入れてみてはいかがでしょうか?
シースリーフィルムは、映像を通して視聴者に伝えることへの知識と専門技術があります。
より効果の高い、より従業員へ浸透するインナーブランディング動画の作成を視野に入れているのでしたら、外部パートナーの活用をおすすめします。
インナーブランディングを検討している方へ
インナーブランディングの施作は自社で行うことも可能ですが、難しい部分はインナーブランディングに強い企業に相談してみるのもおすすめです。
コンサルが得意、イベントに強いなど、企業ごとに強みがあるので、課題やステージに合わせて相談先を選定すると良いでしょう。
シースリーフィルムは、テレビCM制作を核として培ってきたアイデアやクリエイティブの力を応用し、インナーブランディングを目的とした映像やデジタル施作などにも取り組んでいます。
社員へのコミュニケーションに映像を用いることで、エンゲージメントを高める効果が期待できます。
課題整理からコンテンツ制作までワンストップでサポートいたしますので、ぜひご相談ください。