インナーブランディングの取り組みを検討する企業のなかには、社内の反対意見によって進行がストップしているケースがあります。インナーブランディングは企業内部の士気や意識を統一する活動であり、企業の規模や業態に関わらずどんな企業にも必要な考え方です。しかし、価値観の押しつけや強要になってしまうのは、インナーブランディングにおいて禁忌とされています。
「反対社員がいても、多数派で強行突破していいものか?」
「インナーブランディングの必要性をどうやって説得すればよいのか?」
経営者や担当者としては、こんな悩みに頭を抱えることもあるでしょう。
この記事では、このような悩みをお持ちの経営者や担当者の方に向けて、インナーブランディングに反対意見が出ている場合の進め方や対処法について解説しています。通して読んでいただくことで、反対意見を尊重しつつ施策実行に着手していく方法がイメージできると思いますので、ぜひ自社のインナーブランディング推進にお役立てください。
インナーブランディングとは
インナーブランディングとは、企業で働く社員や関係者などに自社のビジョンや理念といった「価値観」を浸透させるための活動を指します。
企業は、生産性の向上や売上アップ、業務効率化や優秀な人材の確保などさまざまな課題に直面しています。このような課題を解決し、企業の安定や成長を実現するには、社内の士気向上が欠かせません。
企業の課題を社員一人ひとりが「自分ごと」として認識し、能動的に行動してもらうためには、まず自社の掲げるビジョンや理念を社内全体の共通意識として浸透させる必要があるのです。
一般的なブランディングとの違い
一般的に、ブランディングは顧客や取引先など外部に対して行われる活動として認知されています。市場における自社の役割を確立し、唯一無二の存在として印象づけるための活動をブランディングとしていることが多いです。
しかし、インナーブランディングは「企業のブランド価値を、社員にどう理解してもらうか」「どれだけ共感してもらえるか」がポイントになります。インナーブランディングによって社内の士気が向上すれば、生産性や製品の品質向上、離職率低下などさまざまな効果が期待できます。
結果的に外部からの評価が高くなったり、売上が向上したりする好循環を生み出すことにつながるでしょう。インナーブランディングの強化は、アウターブランディングの土台を形成する重要な役目を担っているとして、非常に注目度が高まっているのです。
インナーブランディングが必要な企業とは
インナーブランディングが不十分だと、現状の企業課題が解決できないだけでなく、次々に新しい問題に直面していくことになりかねません。働き方や人生観が多様化している現代では、顧客や取引先だけでなく、既存社員や採用応募者などからも「選ばれる企業」になる必要があるといえます。
社員が企業の価値観を理解していない、もしくは共感できていない場合に起こり得る問題を、それぞれ詳しく見てみましょう。
離職率が高い
企業の想いに社員が共感できず、一人ひとりの意識がバラバラになっている場合、離職率が上昇することが危惧されます。離職率が高いということは、会社に何らかの不満を持っていたり、人材が十分な力を発揮できないなど、労働環境が整っていない可能性があります。
離職率が高まる大きな要因には、このようなことが挙げられます。
- 人材育成プログラムが機能していない
- 人事評価制度に問題がある
- 社員の業務量や労働時間が長い
- 社内コミュニケーションが不十分
このような問題があると、会社と社員の双方向の結びつきや信頼関係を表す「社員エンゲージメント」が形成されません。まずは自社の離職率の現状を把握し、問題点を改めて探ってみてください。離職率は離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100(%)で算出できます。自社の離職率が業界や業種の平均を上回っている場合は要注意です。
良い人材が集まらない
インナーブランディングが不十分だと、採用活動にも影響を与えます。採用活動では、まず企業の理念やビジョンを明確に掲げ、それを応募者にわかりやすく伝えることが必要です。その理念やビジョンをベースに、自社が求める人物像を明確にして伝えなければなりません。
とくに採用担当は、自社のブランド価値や魅力を外部にアピールする重要な役割です。しかしそもそもインナーブランディングができていないと、自社のブランド価値や魅力がわからない、アピールの方向性も間違ってしまうなど「うまくいかない採用」に傾いてしまうでしょう。結果的に、企業が求める人物像と実際の応募者との間にズレが生じる「採用ミスマッチ」が多発してしまうことになります。
生産性が低下している
インナーブランディングは生産性にも大きく影響します。生産性とは、一定のリソース投資に対して、どの程度の成果が得られたかという結果です。生産性の低下は、企業の利益の低下に直結し、事業の成長や安定など経営に直結する重要な課題となります。
インナーブランディングが不十分な状態では、社員が企業の価値観に理解や共感ができていない状態。社内の意識がバラバラなので、企業課題を自分ごととして捉えられない社員が多くなり、社員エンゲージメントが低くなります。エンゲージメントの低下は、社員の貢献意欲を下げるので、業務の速度や処理量なども低下し、結果的に会社全体の生産性も低下させます。
また、社内コミュニケーションがうまく機能していないことによって、社員同士が連携をとれなかったり、他部署と自分の仕事のつながりをイメージできないこともあります。縦横の隔たりが大きい場合や、連携体制が整っていない場合にも、生産性は低下しやすくなります。
売上が低迷している
売上が低迷している企業も、社内の労働環境やコミュニケーションの見直しのタイミングにきているかもしれません。売上の低迷には、国内外の環境や社会情勢の変化、トレンドの移り変わりなど外的要因も関係しやすいです。
しかし、内的要因によって売上が低迷している可能性も視野に入れ、対策を講じるべきといえます。売上低迷の内的要因としては、次のような事柄が考えられます。
- 新規顧客の不足
- 社員のモチベーション低下
- 商品やサービスの質低下
- リピーターの低下
- 客単価の低下
- 売上低迷への対処が遅れている
売上低迷の要因として上記のようなことが考えられますが、どれも根本的な問題は「社員の意識」にあります。企業課題と現場社員の気持ちが切り離されており、一人ひとりの積極性に欠ける行動の結果である場合が少なくありません。
その根本の理由は、企業の価値観に共感していない、自社に愛着を持てていないなど、インナーブランディングの形成が不十分であることに起因している可能性が高いです。
インナーブランディングが反対される理由
ここまで、インナーブランディングの形成が不完全であることによって、さまざまな問題が発生することをお伝えしてきました。このような理由から、インナーブランディング施策導入は必須、と考える企業も増えてきています。
しかしその一方で「インナーブランディングは必要ない」「自社にインナーブランディングは向かない」と、反対の意見を示す社員がいることもあるでしょう。インナーブランディングの取り組みに賛同できない理由としては、次のような要因が考えられます。
効果が分かりづらい
アウターブランディングの場合、収益や株価の上昇など具体的な数値結果として効果を実感しやすく、今後の方針を決定するための判断にもつなげやすいですが、インナーブランディングは、効果がわかりづらいことが多いです。
インナーブランディングでは「社員に企業の価値観がどれだけ浸透したか」を正確な数値結果として表すことはできません。定量的な効果測定をするには、組織サーベイやeNPSなどのアンケート調査を用いた特有の測定方法が必要で、それに対するリソースも必要です。長期的なスパンで施策の効果を見守っていける根気が必要になります。
時間や手間がかかる
インナーブランディングの取り組みは、長期的スパンで行うのが基本です。また、施策そのものだけでなく、効果測定にも特有の方法を用いるため、取り組み全体における手間や労力がかかります。時間や手間がかかる上に、効果が見えにくいとなれば「本当に施策を実行する意義があるのか」という疑念が生まれても不思議ではないでしょう。
この場合「そもそもブランディングとは何か?」「どんな目的で行うのか?」という根本的な部分への理解が不足している、もしくは経営者や担当者と考え方のズレが生じている可能性もあります。
企業の規模やかけられる予算によっても、効果を発揮するまでの時間や、必要な手間が変わります。この部分のすり合わせや、進め方や選択肢の検討は欠かせないでしょう。
費用がかかる
インナーブランディングの施策には、必ず費用が発生します。インナーブランディングのポイントは「社内の意識共有」にあるため、より素早く効果的な手法を取り入れたいはずです。すると、社員研修やイベントの実施、社内ポータルサイトの作成など、費用のかかる施策の導入が必須になることもあります。ポスターや動画制作などであっても、コストは必ず発生します。
とくに、長期的な取り組みになればなるほどかかる費用も多くなります。導入したい手法と費用に関しても、インナーブランディングに関する意見の食い違いや衝突につながるでしょう。
まずは、どのような手法があるか、予算内で取り組める手法などを社員間で共有してみるのもおすすめです。インナーブランディングの具体的手法は「インナーブランディング施策の手法とは?具体的な流れや注意点も解説」の記事内で解説していますので、あわせてチェックしてみてください。
施策が逆効果になる場合もある
中途半端にインナーブランディングを始めてしまうと、施策が逆効果になることがあります。たとえば、企業の理念やビジョンが曖昧で確立されていないケースでは、目指すべきものが不明瞭なので、当然効果も見えません。
もしくは、共感しにくい理念や、実現不可能なビジョンを掲げている場合などもあります。このような場合は、インナーブランディングを強化することで逆に反感や不信感を抱く社員が増え、離職者が増加するおそれもあります。
まずはインナーブランディングの正しい進め方を、社内でしっかり共有する必要もあるでしょう。場合によってはMVVやコアコンピタンスなど、企業の核となるモットーから見直さなければならないケースもあります。
インナーブランディングに反対された時の対処法
インナーブランディングへの意見は分かれることもありますが、ブランドの価値観の浸透や、社員の意識統一が必要ない企業というのはないと考えてよいはずです。インナーブランディングは、企業の規模や業態に関わらず、大いに意義のある取り組みだといえます。
そこでここからは、インナーブランディングに反対する社員がいる場合にとれる対処法を考えてみましょう。
目的を明確にする
まずは、自社がインナーブランディングに取り組む目的を明確にする必要があります。明確にするとは、目的や必要性を社内で共有できるレベルまで落とし込むこと。経営陣や担当者が、自分の言葉で説明できる状態まで深く理解してはじめて、他の社員に伝えられるようになります。
また、ある程度の費用やリソースを費やしてでも取り組むべき理由を、改めて考える機会も必要です。そのためには、自社の現状を把握するための実態調査を行うべきケースもあります。アンケートやヒアリング調査で自社の課題がさらにはっきりと浮き彫りになれば、インナーブランディングの必要性に納得力を持たせることができます。
社内の一部で試験的に取り組んでみる
社内アンケートやヒアリング調査などで得た情報を元に、社員の不満や内部環境の課題が見えてくると思います。その結果を元に、インナーブランディングの活動プランを練っていきましょう。最初から企業全体で取り組むのではなく、社内の一部で試験的に取り組み、段階的に広げていくのもよい方法です。
小規模なプロジェクトや、試験的取り組みであっても、事前のプランニングは欠かせません。逆効果に陥ってしまったり、中途半端な活動で終わったりすることのないよう、取り組みの流れを工夫しましょう。情報収集の結果に応じて、自社が取り入れるべき手法が変わりますので、内部の調査とプランニングは重要です。
インナーブランディングに強い企業に相談する
インナーブランディングの支援を行う企業と連携し、相談しながら進めるケースもあります。自社独自に進めることも不可能ではありませんが、外部企業の力を借りることでさまざまなメリットが期待できます。
- 人的リソースが削減できる
- 施策のクオリティが向上する
- 第三者の視点を取り入れられる
- インナーブランディングの専門知識を得られる
プロジェクト全体のコンサルティングを行う企業から、映像制作やイベント企画など、施策ごとに強みを発揮する企業までさまざまです。社内の負担が大きくなりそうな部分や、専門的な知識やスキルが必要な部分だけ相談するなど、外部の協力がどの程度必要かも再検討してみてください。
インナーブランディング施策の中では、短い時間で多くの情報を伝えられる動画が企業の価値観の浸透に適した手法です。動画の内容も、企業のプロモーション動画からインタビュー映像など、さまざまなスタイルがあるので、目的や用途、予算に応じてプランを考えてみましょう。
映像制作会社のシースリーフィルムでは、30年以上のテレビCMなど広告映像制作を通して培ったノウハウを元に、インナーブランディングの動画制作も請け負っています。
ブランドの価値や魅力を伝えるブランディング動画はアイデアやクオリティによって効果が大きく変わります。コンテンツ制作を外部に委託する際は、制作実績の豊富な企業に相談することも大事なポイントです。
インナーブランディングについてご検討される方へ
インナーブランディングの施策において、内製化が難しい部分は外部のプロフェッショナルに相談してみることをおすすめします。コンテンツの質は結果に大きく影響します。専門家への委託は、コンテンツの質を高めるだけでなく、社員が本来の業務に専念できるようになるなど複数のメリットがあります。自社の課題やステージに合わせて、最適な相談先を選んでみてください。
シースリーフィルムは、テレビCMなどのリッチコンテンツ制作の実績を持ち、そのノウハウやアイデアを元に、インナーブランディング用の動画制作やデジタル施作に取り組んでおります。
社員とのコミュニケーションに映像を用いることで、社員エンゲージメントを高める効果も期待できます。課題の整理からコンテンツの制作まで、ワンストップでサポートできるケースもございますので、ご検討中の方はぜ一度ご相談ください