企業内部の結束力を強めるにはインナープロモーションが必要だという話を聞いたことはありませんか?
商品やサービスの質向上、顧客に対するマーケティングはもちろん重要です。しかし、勝てる組織をつくるには働く人の士気やモチベーションを上げることがとても大切です。自社に貢献してくれる人材を守り、社員の離職を防ぐ必要もあるでしょう。
社員一人ひとりが能動的に働くことが、企業の力や業績の底上げにつながります。
しかし、まだまだ導入している企業が多くない現状で、「本当に効果があるの?」「何から始めればいいの?」といった疑問を持っていることも少なくないはずです。
この記事では「インナープロモーション戦略」の全体像について深く解説します。
- インナープロモーションの基本
- 得られる効果
- 具体的施策例
- より効果的なプロモーション
この記事を読むことで「勝てる組織」になるために必ず知っておきたい情報を掲載しました。必要性や具体的施策を理解することで、目的や戦略も明確になり、実行に移せる段階までもっていくことができるでしょう。
インナープロモーションとは
インナープロモーションとは、社員や従業員の意思を統一するためのプロモーション活動のことをいいます。従業員の士気を上げたり、考え方や気持ちを社内全体で共通のものにしていくための活動で「社内プロモーション」と呼ばれることもあります。
インナープロモーションは「勝てる組織」や「選ばれる会社」を作るために欠かせない取り組みです。事業の立ち上げ時や業績の低迷などを機に、インナープロモーションの重要性を感じるケースも少なくありません。顧客や取引先などステークホルダーへのアプローチも大切ですが、社内の意思統一や環境整備などを行うことは、それと同等以上に重要です。
インナーブランディングとインナープロモーション
インナープロモーションは、インナーブランディングの中に含まれる活動です。両者には次のような違いがあります。
インナーブランディング | 企業理念や企業価値に共感し、共通の意思を浸透させるための活動 |
インナープロモーション | 企業理念やブランド価値を、組織力や販売力アップに向けて前に進める活動 |
プロモーションという言葉には、本来「昇進」という意味があります。前に進んだり、高めていくことを意味するのです。インナープロモーションは社内の共通理念やビジョンを元に、従業員一人ひとりの気持ちや行動を向上させるための、より具体的な活動になります。
つまり、インナープロモーションを行うには、企業の理念や価値、意思の方向性を浸透させる「インナーブランディング」が正しく構築されていることが前提となります。インナーブランディングが確立できて初めて、インナープロモーションの段階へ進めると認識してください。
インナープロモーションが必要とされる理由
インナープロモーションは、働き方や価値観が多様化している現代では必須の取り組みだと考えられています。
ひとつの会社に留まることに大きな価値を感じなくなった現代の人々は、どんどん社外にスピンアウトするようになりました。企業の生き残りをかけるには、優秀な人材を確保することや、既存の従業員の能力を底上げすることがカギになってくるのです。
理念やビジョンを掲げても、それが社内活動に落とし込まれ、活かされなければ意味がありません。そこで、インナープロモーションを通じて従業員一人ひとりの志や行動を変える必要があるのです。
社内研修との違い
インナープロモーションと社内研修では、メインの目的が異なります。社内研修は、特定の業務に関する知識やスキル面の向上が主眼です。
一方、インナープロモーションは一人ひとりの士気や感情といった部分に訴えかける活動。もちろん、社内研修も自社の風土や価値観を伝える機会にはなり得ますが、それぞれ重きを置くポイントが異なるため、別枠で進めるのがベストです。
インナープロモーションがもたらす効果
インナープロモーションは、社員一人ひとりが自分の仕事に主体的に取り組むようになることを目指すものです。士気を高め、働くモチベーションそのものを変化させれば、さまざまな波及的効果が期待できます。
意思統一で組織は進化する~企業の一体感
組織とは、経営者やリーダーだけで運営するものではなく、社員全員で作りあげるものだというのは周知の事実でしょう。しかし経営層だけが「共通の意思で動いている」と思い込んでいるケースは少なくありません。
とくに会社の急成長期には、トップダウンのワンマン経営が起こりがちです。業績不振や内部の対立といった問題は枝葉の問題にすぎず、根本的な原因はトップと現場の考え方の認識のズレにあることが多いです。
組織の進化は、経営層が描く方向性と現場の意識が一致する「一体感」が重要なポイントになります。経営層から現場社員までの企業全体が一体化することで、理想的な成長があとから自然についてくるのです。
仕事への姿勢~製品・品質の向上
インナープロモーションを実践することにより、社員一人ひとりの「仕事に対する姿勢」を変化させます。仕事への姿勢は、結果的によい商品やサービスを生み出し、品質や顧客満足度の向上へと発展するのです。
多くの人は、基本的にお金や生活のために働くという目的をもっています。しかし残念ながら、それは次第に「自分がどれだけ効率よく高い給料をもらえるか」という方向に変化しがちです。
しかし、インナープロモーションでは社員に対して、この会社で働く理由や意義を認識してもらう効果があります。「この会社で働きたい」というポジティブな感情をもってもらうことができれば、一人ひとりの行動は常に能動的で主体性のある「+1」を生み出すようにもなるのです。
【主体性ある+1の行動 × 従業員数】が実現できれば、結果的に顧客からの信頼や評価につながり、企業の業績を底上げする可能性を秘めています。
人財を確保~離職率の低下
インナープロモーションは、離職率の低下を防ぐ効果も期待できます。現代の企業において、離職率を下げることや、優秀な人材を確保しておくことは大きな課題。社員には、この会社で働き続ける意思を強め、企業の中で力を発揮できるという可能性を感じてもらう必要があります。
ソフトウェア開発会社「サイボウズ株式会社」は、過去に離職率28%にまで陥った時期がありました。しかしインナープロモーションを実践することによって組織内部を改革し、現在の離職率は4%まで低下。Great Place to Work® Institute Japanが実施した『働きがいのある会社ランキング 中規模部門(従業員100-999人)』では、2021年度版において2位に選出されました。
意識がもたらす企業ブランドの向上
社員一人ひとりの意識は、企業ブランドの価値を向上させます。もっともわかりやすい企業は東京ディズニーランド(TDL)です。「唯一無二のブランド」として知られるTDLでは、さまざまなインナープロモーションを実施していることでもよく知られています。
TDLでは社員のことを「キャスト」と呼び、全員がパーク内の演者であるという統一された意思のもと働いているのです。キャスト一人ひとりが「お客様に何を与えるべきか?」「お客様は何を求めているか?」というニーズを理解しています。さらに「お客様のニーズを満たす役割を担っている」という意識が明確で、その指針のもとそれぞれ主体的に行動しています。
この「意識」の違いが、他にはない究極のブランディングを成功させているのです。一般的な企業でも一人ひとりの意識やモチベーションの持っていき方を工夫することで、強力な企業体制が整っていきます。
社内の意思統一に必要なこと
では、社内の意思統一を行うためには何が必要でしょうか?重要なのは、会社と従業員の適切な距離とつながりです。「この会社で働くことで得るものがある」と感じてもらい、それを深く意識付けることが大切になります。
会社と従業員のエンゲージメントが重要
従業員エンゲージメントとは「従業員が会社に貢献したい」と思う姿勢のことです。エンゲージメントとは、約束や契約、雇用などを指す言葉ですが、インナープロモーションにおけるエンゲージメントとは「強い結びつき」を表すと考えてください。
従来は、同僚や同期などのヨコの関係は友好的で、上司や管理職などのタテの関係とは対立する構図が一般的でした。しかしこれでは、従業員が会社に貢献したいという気持ちになるはずがありません。従業員エンゲージメントを高めるには、社員が会社のビジョンに対して強く共感する必要があります。
ここで大事なのは、共感です。従うだけだったり、鵜呑みにしたりするのではなく「同じ気持ちになる」ということが非常に大切。ヨコだけでなく、タテのエンゲージメントを高め、会社と従業員を心理的に強く結びつける必要があります。
インセンティブ
インセンティブとは、意欲を起こさせるものや、人のやる気を刺激するものといった意味があります。つまり、人が意欲を起こすための動機づけです。
企業では「インセンティブ制度」として仕組み化しているケースもあります。個人の行動や実績に対して+αの報酬を上乗せして支払う制度です。
+1の行動に対して与えられる「励まし」や「感謝」が、人のやる気を継続的に維持するコツなのです。インセンティブは、金券のプレゼントやポイント制度、表彰という形で付与されることもあります。
ヒューマンリレーション
ヒューマンリレーションとは、人間関係のこと。インナーブランディングを推進していくには、経営層と現場の人間関係の構築や改善がとても重要です。とくに、各プロジェクトや部門、班ごとのキーマンとなる人材との連携や関係構築は重視しなければなりません。
理念やビジョンは、当然経営層が主体となって考えるものです。しかし、プロモーションは現場のキーマンに率先して動いてもらう必要があります。各部署やプロジェクトチームの中心人物と良好な関係を築くことが重要です。細やかなコミュニケーションやラポール形成の手法などを実践しながら育てていく必要があります。
インナープロモーション3つの戦略方針と浸透させるコツ
理念やビジョンを社内全体に浸透させるには、経営層から現場への明確なメッセージを継続的に伝えていく必要があります。考えを現場の社員へ正しい解釈で伝えるには、トップダウンのメンバーが「伝えるべきこと」を明確に整理しておくことが大切です。
インナープロモーションでは、軸となる戦略方針が3つあります。
- モチベーション向上
- 販売スキル向上
- 環境整備
ここからは上記3つのポイントに対する具体的施策を、事例を交えながら解説していきます。
モチベーション向上の施策
社員のモチベーション向上には、次のような施策が有効です。
- インセンティブ制度の導入
- 社内イベントの実施
- 新しい商品やサービスのガイダンス
モチベーション向上の施策として、もっとも多く用いられるのはインセンティブ制度です。改善提案1件に対しての報奨金を出す、ポイントを付与して提携店舗で使用できるようにする、といった方法を実施している企業もあります。インセンティブは金銭的なものとは限らず、表彰や社内報インタビューといった形で還元するのも有効です。
新しい商品やサービスへの知識を深めてもらうことも、社員のモチベーション向上につながります。ガイダンスや講習会などを開いて、自社で扱う商材への理解を深める機会を設けましょう。
それに伴って、社内イベントも重要なポイントになってくるでしょう。食事会や運動会などの社内行事を開催することによって、社員とのコミュニケーションを活発化することも大切です。
販売スキル向上の施策
商品やサービスを顧客に直接届ける営業職の場合、販売スキルを高めることが重要になります。販売スキル向上には次のような施策が効果的です。
- 営業マニュアル作成
- 業務プロセスの体系化
- 社内Q&A制度
営業職では、重要な手順や注意すべきことをマニュアル化し、社員全員に周知する必要があります。経験の浅い社員が手探りで営業を行うのは至難の業。マニュアル化して全体共有できれば、若手社員のスキル水準を引き上げることも可能です。
また、成果を上げている営業職員の知見や経験を体系化することも必要です。成果を出している社員の行動パターンを可視化することは、営業職に限らずどの部門においても活用できるので「業務プロセスの体系化」はとくに重要なポイントでしょう。
社内Q&A制度も、効率よく社員のスキルアップを図れる施策です。社員からあがった質問に丁寧に回答し、全体共有することで「質問しやすい環境」と「理解しやすい環境」が整います。
環境を整える施策
働くモチベーションや、社員エンゲージメントを高めるには「労働環境」が非常に大切です。もっともわかりやすい例は世界のトップ企業Googleでしょう。Googleでは社員食堂で1日3食の食事が無料、仮眠室や卓球台、防音音楽ルーム完備など、誰もが快適で楽しく働ける環境整備を徹底しています。
同じような物理的環境を用意するのは難しい問題ですが、他に参考になる施策事例は多くあります。
- 全社員ミーティング
- 創業者からの動画メッセージ
- 経営層と社員のコミュニケーション
- 福利厚生の充実化
なかでも食の福利厚生を充実させることの効果は、社員の満足度を高めるのに大いに有効です。質の良いケータリングや社食サービスもあるので、日本企業でも多く取り入れられています。
わかりやすい施策を
策定した企業ビジョンやミッションは、誰にでもわかりやすい形で届ける必要があります。難しくて理解しにくい内容を聞き続けることほど苦しいことはありません。
従業員に浸透させるには、簡素で伝わりやすいメッセージにして伝えましょう。
情報インフラ提供を行う「株式会社ユーザベース」では、社員共通の行動模範をまとめたカルチャー・ブックというイラスト付き冊子を配布しています。
「すべきこと」「すべできないこと」を、絵本のような単純明快な方法で明示しているのです。
このような企業文化を明文化している印刷物の配布やスライドの公開は海外企業のNetflix(culture deck)やZapposも実施しています。
メッセージは継続的に発信
経営層から社員へのメッセージは、一度きりではなく継続的に何度も発信していきましょう。「最初に説明したはず」といった曖昧なメッセージでは効果は望めません。
また、最初から効果的な方法が確立できるとも限らないため、根気よく伝え続けることが大切です。
インナープロモーションも社外へのプロモーション同様、効果測定を行い改善を繰り返しながらの継続的発信が重要です。
仮説立てや改善をしながら継続してメッセージを送り続けることにより「経営層が本当に伝えたいこと」が社員に広く、深く浸透していくでしょう。
成功事例から学ぶ効果的なプロモーション
もっとも効果的なのは、視覚に訴えるプロモーション施策です。人間の脳は約90%もの情報を視覚から得ているともいわれます。当記事でもたくさんの施策案を紹介してきましたが、最初に着手すべきなのはやはり視覚情報を使ったインナープロモーションです。
定期的な会社TOPからのメッセージビデオ
最も効果的な方法として会社のトップメンバーから、全社員に向けたメッセージビデオの配信が挙げられます。
Googleでは、全社員ミーティングで創業者やトップメンバー自らが社員に語り掛ける取り組みをしています。
トヨタ自動車では、社長豊田章男氏が従業員を前に発信するメッセージ動画を発信しています。豊田社長のメッセージは社員の感情に強く訴えかけていることがわかります。
経営層は時間的な制約が多く、社員とリアルタイムでやりとりできる機会はそう多くないのが現状ではないでしょうか。そこで、定期的にメッセージビデオを撮影し、社員に共有する方法が有効です。
動画形式であれば文字情報だけでは表現できない、表情・雰囲気・ボディランゲージなどの非言語コミュニケーションを最大限に活かして、メッセージを送ることができます。
インナーコミュニケーションに役立つ社内報
社内報は、企業の内部状況や働く人について知ることができる手段です。社内報は組織内のコミュニケーションを図る効果もあります。
社内報は、社内の誰が、どこで、どんな仕事をしているかを簡単に知ることができるツールです。各部門の仕事内容や、そこで働くメンバーがどんなモチベーションで働いているのかを知れば、企業の全体像をイメージしやすくなります。
企業の仕事の全体像を把握できると、社員それぞれが自分が携わっている仕事の意義を見出せるようになるのです。そのためにも社内報は大いに活用できるインナープロモーションツールです。
参考にしていただきたいのは、求人情報サイトを運営するエン・ジャパン株式会社の事例。エン・ジャパンの社内報「ensoku!(エンソク)」はWEBサイトで一般公開しているので誰でも自由に見ることができます。
ただし、忙しい社員が社内報を必ず読むとは限りません。「時間を割いてでも読みたい」「毎号楽しみにしている」と思ってもらえるような内容にするのは難しいです。
効果を生むポイント
社内報やメッセージビデオが成果を生みやすい理由は、視覚に訴えかける手法であるためです。同じ情報でも、文字情報より視覚化された情報の方が内容に集中しやすいため、社員一人ひとりにしっかり届きます。
社内報であれば図解やイラスト、写真などをうまく活用し、視覚に訴えかける内容を意識するとよいでしょう。動画では、TOPメンバーの想いを届けるだけでなく、親近感のあるメッセージなど、工夫を凝らしながら制作していくとよいです。
失敗しないために注意する点
インナープロモーションはそれなりにリソースのかかる取り組みです。失敗を防ぐために重要な2つのポイントを押さえてみてください。
PDCAが大事
インナープロモーションもマーケティングや集客同様、効果測定や改善などを繰り返すPDCAが非常に大切です。
企業内部の状況は実に多様なため「これをやれば必ず成功する」という絶対的な正解ありません。また、インナープロモーション施策は一度やったら終わりではなく、継続的に発信し続けることも大切。
常に検証しながら課題を見つけ、実験や改善を継続していくことが必要です。
経営層のみの考えで行うと「押しつけ」になる
インナープロモーションを経営層の考えだけで進めてしまうと、社員との考え方にズレが生じ「押しつけ」と受け止められるおそれもあります。
会社の理念やビジョンを正しく浸透させるのは一朝一夕にはいきません。当然、同調しない社員が出てくることも予測できるでしょう。
そのような社員が排除されたり、立場が厳しくならないような配慮も必要。たとえば、行動模範を示すカルチャー・ブックの内容、体系化された業務プロセスなどは「絶対ルール」ではないことを理解してもらうのも大切です。
インナープロモーションを「押しつけ」しないためには、各部門やプロジェクトごとのリーダーが主体となって進めることがポイントです。社員主体の活動であれば、若手社員たちも抵抗なく自然に受け入れやすくなります。
インナープロモーションを検討される方へ
インナープロモーションの施策は、自社で行うことも可能です。自社で行う場合は、経営企画部や広報部などが主体となって推進していくケースが多くなっています。
ただし、現状の業務で手一杯だったり、何をどこから進めればよいかわからなかったりするケースも少なくありません。自社で取り組むのが難しい部分は、インナープロモーションの施策提案に強い企業に委託するのも賢い選択です。
サポートを行う企業ごとに、コンサルティングに強い企業、イベント企画立案などが強みの企業など、特徴はさまざまですので、自社の課題やステージに合わせた選択が重要になります。
社内コミュニケーションに映像を用いれば、社員との距離感を縮めたり、エンゲージメント向上を目指したりすることも可能です。視覚に訴える伝わりやすいメッセージを、素早く届けることができます。
インナープロモーションに活用する映像は、魅力的でハイクオリティなものにすることも必須です。シースリーフィルムは、テレビCM制作を核として培ってきたアイデアやクリエイティブな力を応用し、インナーブランディング用の映像やデジタル施策などに取り組んでいます。
「まずは課題の整理からしたい」といったご要望にもお答えします。着手すべきことの把握から、実際の制作までワンストップでサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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