組織の生産性を高めるには、社内コミュニケーションの活性化が重要です。しかしその一方で、リモートワークの増加やソーシャルディスタンスの観点などから、社内コミュニケーションの機会がどんどん減っており、経営者や企業担当者が危機感を覚える状況が続いています。
そこで、今重視されているのがインナーコミュニケーションです。以前から重視されていた考え方ですが、現代では施策方法や取り組み方が多様化しているため、どこからどう始めてよいかわかりにくくなっているかもしれません。
- どんな企業がやるべき?
- いちばん効果がある手法は?
- 自社に必要な施策はどれ?
- すぐに実践できそうな方法はある?
この記事では、このような疑問を抱えている方に向けて、具体的な施策から成功に欠かせないコツなどを詳しく解説しています。通して読んでいただくことで、自社に最適なインナーコミュニケーション施策を選び、実践に向けて動き出せる段階まで前進できるでしょう。業務の事前調査や、方向性の決定にぜひお役立てください。
インナーコミュニケーションとは
インナーコミュニケーションとは、企業の組織力を高めるためにコミュニケーションを活性化させる取り組みです。インナーコミュニケーションを積極的に行うことで、企業の理念やビジョンの浸透、社員のモチベーションやエンゲージメントの向上などを図ることができます。
たとえば、社内全体に向けてメッセージを発信する広報活動や、社員コミュニケーションの機会増加など。コミュニケーションを活性化できれば、組織に一体感が生まれ、全体的な生産性や事業成果も向上すると考えられています。
インナーコミュニケーションは、特別新しい取り組みではなく、昔から多くの企業で重要視されていました。しかし現代ではさまざまな時代背景により、インナーコミュニケーションの重要性がますます高まってきています。
社会的な変化や時代背景を元に、インナーコミュニケーションの重要性やメリットについて理解を深めていきましょう。
インナーコミュニケーションが重視されている3つの理由
現代の企業でインナーコミュニケーションが重視されるのには、大きく3つの理由があります。
多くの企業がインナーコミュニケーションに関する課題を持っている
社内のコミュニケーション不足は、多くの企業が感じている課題です。コミュニケーション不足は人事担当だけでなく、経営企画、広報など部門に関わらずネックになる要素。
HR総研が行った『社内コミュニケーションに関するアンケート2022』の調査結果によると、自社の社内コミュニケーションに課題があると感じている企業は全体の7割にものぼっています。
さらに、同調査によると、社員間のコミュニケーションが不足することで業務に支障が出ると感じているのは全体の93%という結果に。このような大きな課題をインナーコミュニケーションで改善すれば、社員一人ひとりが働きやすくなり、結果的に組織の結束力や一体感につなげていくことができます。
社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になると思うか
出典:HR総研:社内コミュニケーションに関するアンケート2022 結果報告 (ProFuture株式会社/HR総研)
人材の流動性の高まり
現代の企業では、人材確保も大きな課題です。少子高齢化社会に加え、転職の一般化や働き方の多様化など、ひとりの人材がひとつの企業に一生勤め続ける確率はどんどん減っています。
Job総研が行った『2022年 転職意識調査vol.1』(調査対象者: 全国 / 男女 / 20~69歳、調査条件: 1年以内~10年以上勤務している社会人 / 20人~1000人以上規模の会社に所属)では、調査対象者の78.8%に転職経験があり、54.2%の人が「現在転職を検討している」と回答しています。
また、dodaが2020年度(2020年4月~2021年3月)の1年間に転職活動を行った約10万人のデータによると、転職理由として社会情勢の影響もあり「他にやりたい仕事がある」「会社の将来性が不安」といった理由を挙げる人が多い傾向になっています。
会社への貢献意欲や、活躍する意義を見出してもらうことが、社員に長く勤めてもらうことにつながります。
インナーコミュニケーションでは、社員に組織への愛着をもってもらい、ビジョンや理念への共感を強めてもらう効果が期待できます。「この会社で働きたい」という意思を持ってもらうことが、人材の流出を抑止する結果につながるのです。
テレワークの増加
テレワークやリモートワークが増加したことも、社内コミュニケーションの不足に直結しています。
先ほども参照した、HR総研『社内コミュニケーションに関するアンケート2022』によるとテレワークの導入はメリットをもたらす一方で、質問や相談、確認の機会が減り、スムーズな情報共有ができないという業務に直結する問題が顕著になりました。
また出社時の挨拶やランチタイムの雑談などの他愛ない交流がなくなったことで、社員同士の距離が開き、全体的な士気が下がるといったことも問題視されています。
遠隔でも、社員同士の情報共有や交流がしやすい環境を整えることが求められているのです。
インナーコミュニケーションのメリットや効果
このような課題を踏まえ、インナーコミュニケーションがもたらすプラスの変化について考えてみましょう。インナーコミュニケーションには、社会背景上の課題だけでなく、根本の組織力アップにつながる大きなメリットが期待されています。
モチベーションの向上
効果的なインナーコミュニケーションを行えば、社員のモチベーションを向上させることができます。モチベーションを向上させるには、社員同士の会話や上司やリーダーからの声掛け、メッセージなどが欠かせません。
たとえば、社員の名前や顔を覚えること、業務に対する感謝やねぎらいの言葉、期待や信頼を日々継続して伝えることなど。このように、社員一人ひとりに関心を向ける働きかけがない場合、社員のモチベーションが低下しやすくなり、この会社で働く理由や目的を見失いかねません。
インナーコミュニケーションを行い、社員同士や経営層やリーダーからの声掛けを積極的にすることで、社員のモチベーションアップが期待できます。さらにモチベーションを持続させるには、社員一人ひとりの帰属感である「エンゲージメント」を高めることも重要です。
効果的なインナーコミュニケーションができれば、社員が自分の仕事にやりがいや意義を見出し、持続できるサイクルを作ることも可能です。
離職率の低下
インナーコミュニケーションは、離職率の低下にも効果が期待できます。退職理由として多く挙げられる理由は精神的負担や人間関係の問題です。インナーコミュニケーションを最適化していれば社員の離職を防げたという可能性はあります。
社員同士や、リーダーとの円滑なコミュニケーションが行われていれば、良き相談相手に恵まれることや、社員と意見交換できる機会も増えるでしょう。困っている社員の存在に周囲が気づきやすくなることで、一人で負担を抱え込むような状況をできる限り回避することもできます。
モチベーションやエンゲージメントを向上し、+αを生み出すことももちろん大切ですが、日々の仕事を不都合なく進められること、問題や滞りなく行える環境作りも重要。インナーコミュニケーションの取り組みが適切に機能していれば、会社を去ってしまう人材を減らせるのです。
労働生産性の向上
インナーコミュニケーションには、労働生産性を高める効果があります。労働生産性を上げるには、必要な場面でスムーズに交流できる環境が欠かせません。「情報共有してほしい」「協力を求めたい」と思っても、物理的に難しかったり、ためらったりするような環境では生産性が低下します。そもそも連携や分担、十分な情報共有がされていなければ、そのぶん業務ロスが多くなるでしょう。
また、企業の労働生産性には、従業員のモチベーションやエンゲージメントが大きく関わっているのも事実です。社員が円滑なコミュニケーションを行える環境は、日々の業務にプラスの刺激を与えたり、反対にマイナスの影響を回避したりすることができます。
結果的に社員のモチベーションやエンゲージメントを向上、維持する結果にもなるため、企業全体の労働生産性を高めていけるのです。
テレワークによるコミュニケーション不足の解消
インナーコミュニケーションでは、テレワークにおけるコミュニケーション不足も解消できます。経営陣からのメッセージ発信、オンラインミーティングツールなどを活用すれば、顔が見えないことによる心理的不安を解消し、雑談の機会減少をカバーすることが可能です。
また、メンバーの作業状況やスケジュール管理、チャットマナーなどの体制作りを行うことで、社員同士の行き違いや誤解、ミスなどを防ぐこともできます。
交流の仕方や情報共有の方法を最適化していけば、テレワークの利点を大いに生かしながら、デメリットをカバーすることもできるはずです。テレワーク対応に関しては、新しいツールの導入や環境整備が必要かもしれません。しかし、ここでしっかり策を講じておくことで、新時代に適応した労働環境を整え、組織力を高めることができるでしょう。
インナーコミュニケーションを促進させる方法
ここからは効果的なインナーコミュニケーションを促進させる具体的施策を紹介します。さまざまな手法やツールがあるため、必ずしもすべてを導入する必要はありません。自社に合ったもの、取り入れやすい方法を選ぶ際の参考にしてみてください。
動画
社内コミュニケーションの活性化に、動画を用いる事例は年々増加しています。インナーコミュニケーションで動画が活用できる場面は非常に多いです。
- 企業の理念やビジョン、ミッションの共有
- 目標の周知や結果報告
- 業務ノウハウの伝達
- 社内文化やルールの説明 など
上記はあくまでも一例ですが、社員に浸透させたい内容であればあるほど、動画による視覚的効果が活きるでしょう。
映像では、社員に伝えたい内容だけでなく、発信者の表情や声の抑揚、ボディランゲージといった非言語コミュニケーションの情報も伝えられます。映像で実際の姿や声をそのまま届けることには大きな伝達効果があるでしょう。
また、動画であれば情報共有のために作成した資料を使い、プレゼンテーションを行うことも可能です。言語と非言語の両方を使ってコミュニケーションをとれるので、伝えられる情報量を最大化できます。
動画を使ったインナーコミュニケーションは、次のような特徴をもつ企業で広く活用されています。
- 従業員数の多い企業
- チェーン店など多店舗や広域展開
- 事業所や支店が点在する企業
- 従業員の数が急激に増えている企業
このような企業では、作成した動画を社員に送信するだけで全体周知が可能になるため、効率よくインナーコミュニケーションを促進できます。
ただし、動画の内容が外部に共有されることがないよう、配慮しなければなりません。情報漏洩を防ぎセキュリティの管理をしっかり行い、社員が共有できる環境で発信しましょう。
社内報
インナーコミュニケーションでは、社内報という手段も有効です。社内報の役割は、経営層から社員にメッセージを届けるだけでなく、各部門ごとの業務内容や成果などを他部門に知ってもらうこともあります。他の社員や部署の動きを知ることで、仕事の全体的イメージが湧きやすくなり、会社の一体感を生み出す効果も期待できるでしょう。
大規模な企業や、全国各地に事業所や店舗がある企業に適しており、昔から取り入れられているポピュラーな方法でもあります。
ただし、冊子や新聞のような形で社内報を作成するには、印刷コストや編集作業が必要です。近年では社内報をWebページで公開したり、動画や音声コンテンツとして配信するケースも増えています。
社内イベント
社内イベントも、インナーコミュニケーションの促進に効果的です。社内イベントには次のようなものがあります。
- 勉強会
- 研修
- 総会
- ランチ会
- 新年会や忘年会
- レクリエーション など
運動会やレクリエーションなど、業務以外の内容で交流を図る機会も重要です。研修や勉強会といった業務に関わるイベントだけでなく、親睦を深められるようなラフなイベントも有効。社内イベントは、企業の規模や形態に関わらず効果的な方法といえます。
ただしイベントは準備に時間がかかりますし、社員の参加率を上げることが難しい場合があります。企画の意図や社内コミュニケーションの重要性を、社員に正しく伝えることが重要になるでしょう。
社内SNS・ビジネスチャット
社内SNSやビジネスチャットなども、インナーコミュニケーションの方法として活用されています。テキストによる素早い交流は、手軽にコミュニケーションの量を増やせる手法です。業務上の報連相だけでなく、気軽な雑談ができる場を設ける企業が増えてきています。
社内SNSやビジネスチャットには、次のようなツールが広く利用されていますので参考にしてみましょう。
- Slack
- Chatwork
- LINE WORKS
- Talknote
- Microsoft Teams
- Workplace など
社内でよくある疑問や個人的なノウハウをツールで共有したり、議事録やマニュアルをいつでも自由に閲覧できるシステムを導入している企業もあります。このような取り組みはインナーコミュニケーションの促進と共に、属人化を防ぐことや、業務効率化にもつながります。
ただし、社内SNSやビジネスチャットは目的やルールを明確にしたうえで導入しましょう。特定のメンバーしか参加しなかったり、プライベートなトークや投稿が増えることでトラブルに発展するケースもあるため、対策が必要です。
オフィスのレイアウト変更
オフィスのレイアウトを工夫することも、インナーコミュニケーションの促進になります。社員の自然な交流が生まれる「動線」を意識したオフィス設計にしてみましょう。
社員のデスクを固定するのではなく、毎日自由に働く席を選べる「フリーアドレス」を取り入れるケースが増えています。従業員が休憩や雑談の場として集まれるフリースペースの設置なども有効。誰でも自由に使える共有スペースをいくつか備えることで、自然に社員間でのコミュニケーションが生まれるようになります。
会社の規模が大きく、従業員数の多い企業のインナーコミュニケーションにはとくに効果的です。
なお、オフィスレイアウトはフリースペースばかりにならないように注意しましょう。ひとりの作業や1対1のミーティングをしやすい個別スペースなども設け、バランスを取ることも大切です。
経営陣からの情報配信
経営陣から社員に向けての情報発信は、インナーコミュニケーションのなかでも重要な項目です。
組織全体を見渡しにくい現場の社員は「自社が今どのような状況にあるか」「どんな成果を出しているか」といった動向を知ることができません。経営陣から現場に向けて積極的に情報共有することで、一人ひとりのモチベーションやエンゲージメントを高める必要があります。理念やビジョンを浸透させる際にも、1回きりではなく継続的でこまめな発信が必要です。
また、経営陣からの情報発信は、社員の心理にプラスに働くものでなければなりません。一方的に多量のメッセージが送られるだけでは、社員の負担になったり押しつけと感じられたりするおそれがあるためです。
とある企業では、社内イントラで毎日社長日記を配信し、社員がコメントをつけられるようにしています。社員へのコメントには社長が直接反応を返し、双方向のコミュニケーションを図っているのです。経営陣からの情報発信は、現場の社員に伝わりやすく、リアクションしやすい方法を選ぶのが重要になります。
インナーコミュニケーションを成功させるポイント
インナーコミュニケーション施策を実行しても、思うような成果が出ない、効果を感じられないといったケースもあります。このようなケースでは、インナーコミュニケーションにおける重要な前提やポイントが疎かになっている可能性があります。
施策の成功に欠かせない、次の3つのポイントをおさえてみてください。
社内全体で取り組む
インナーコミュニケーションは、社内全体で取り組むことが大切です。一部の社員や経営層だけで進めてしまわないように注意しましょう。新しい取り組みが始まると「仕事が増える」「余計なことをしなくていいのに」という意見が出ることもあります。ここを解消しないと、社員の「やらされている感」が拭えず失敗に終わってしまうかもしれません。
とくに、経営層と各部門ごとのリーダーの連携が重要です。経営層がインナーコミュニケーションに取り組みたいのであれば、現場の社員に対し取り組みへの意図や思いをしっかり伝えなければなりません。反対に、インナーコミュニケーションの必要性を感じているのが人事担当者やブランディング担当などの立場であれば、決定権を持つ役職の人やトップダウンメンバーを味方につけることも必要でしょう。
大切なのは「インナーコミュニケーションは、会社と社員全員にとって必要なものだ」という認識を、より多くの人に広めていくことです。
複数のコミュニケーション方法を活用する
インナーコミュニケーションは、複数の方法をバランスよく活用しましょう。ひとつの方法だけでは成果が出るのに時間がかかるうえ、個人の特性によって施策の効果にバラつきが生じるためです。
たとえば、社内のランチ会や懇親会という場は苦手でも、社内SNSやチャットツールでは交流がしやすい人。社内SNSで積極的に投稿できなくても、社長メッセージやプレゼン資料を見るのは楽しみな人など。個性あふれる多様な社員に対し、何が効果を発揮するかは一様ではありません。
そのため、タイプの異なる方法を複数活用し、バランスを取っていくことも重要になります。企業の風土や目的、そして予算や事業規模などに合わせ、計画的に取り入れるのが大切です。
中長期的な目標として取り組む
インナーコミュニケーションを行うときは、中長期的な視点で取り組みましょう。インナーコミュニケーションはすぐに成果が出るものではなく、効果測定しにくい部分もあります。
また、成果を重視しすぎて焦ってしまい、せっかくの施策が台無しになったり、逆効果になったりするおそれもあります。結果を急ぐことで、社員への強要や押しつけが生まれてしまうこともあるでしょう。
インナーコミュニケーションは、場合によっては数年単位での計画が必要なこともあります。まずは先導する経営層や担当者が気持ちに余裕を持ち、楽しみながら行うという心構えも必要ではないでしょうか。
インナーコミュニケーション施策を検討している方へ
インナーコミュニケーションは、組織内のコミュニケーションの量や質を高める取り組みです。人材の流動化や人手不足が懸念される現代では、所属する社員一人ひとりが「この会社で働き続けたい」と思える環境整備が欠かせません。新しいツールを導入したり、アイデアを出し合うなどして、自社に最適なインナーコミュニケーションの計画を立ててみてください。
初歩的な段階では、動画を用いたインナーコミュニケーション施策が有効です。社員との距離感を縮めることや、モチベーションやエンゲージメントの向上に、動画活用はとても効果的です。伝わりやすいメッセージを一斉に発信すれば、より広く効率的に情報を届けられます。
担当者だけで施策を実行することもできますが、リソースや知識不足から不安な部分が出てくることもあるでしょう。社内で対応できない部分は、インナーコミュニケーション施策をサポートする企業へ委託するのもおすすめです。
また、インナーコミュニケーションに使用する映像は、魅力的でハイクオリティなものの方がより高い効果を期待できます。シースリーフィルムでは、テレビCMを核として培ったアイデアや品質、クリエイティブな力を応用し、インナーコミュニケーション用の施策動画を制作いたします。
動画制作をメイン事業としていますが、インナーコミュニケーションの戦略策定のご相談に応じることも可能です。課題の整理や計画のご相談から、実際の制作までワンストップでサポートいたしますので、お気軽にお問合せください。