エンゲージメントややりがいなど、近年は社員の内面やモチベーションに着目して企業経営を改善する傾向が強まりつつあります。企業として目先の利益を追うだけでは社員の信頼が得られず、社員が流出し、企業そのものの存続すら危うくなってしまいます。その時代の中でとりわけ規模や影響度が大きい活動がインナーブランディングですが、それを実施し推進していく能力や経験を持たない企業が多く、インナーブランディング担当者の方は頭を抱えることが多いのも事実です。
そこで、今回の記事ではインナーブランディングを取り組むにあたって見逃されがちな目標設定の重要性とそのポイントをお伝えしていきます。
インナーブランディングとは
インナーブランディングとは、企業の社員に向けて自社の魅力や将来の展望などを発信し、理解してもらう活動のことを指します。インナーブランディングを適切に行うことによって自社に対する理解が深まることで企業や仕事に対する思い入れが増し、社員自身がどのように能力を発揮し、企業に貢献することができるかを主体的に考える習慣を身につけてもらうことも可能になります。
企業を構成する社員が一つの方向を目指し、一人ひとりが持つ役割の中で能力を発揮することで企業成長が促進されるほか、自社のために働き続けることのモチベーションが高まり、人材の流出を防ぐことにつながります。また、社員自身が自社の魅力を様々な形で発信することにもつながり、企業の知名度や認知度、あるいは信頼の向上に寄与します。
アウターブランディングとはどう違う?
インナーブランディングと対照的な活動としてアウターブランディングがあります。これはテレビCMや広告などで自社の魅力を社会や消費者向けに発信する活動のことを指します。インナーブランディングも自社の魅力を発信する点においては同じですが、発信する対象が社員か消費者であるか、という点が異なります。その結果として、アウターブランディングを行う目的は、商品やサービスを知ってもらい販売を上げることに焦点が置かれ、インナーブランディングと比較して効果が可視化しやすい傾向にあります。
インナーブランディングの方法
インナーブランディングを行い、自社の組織力を根本から向上していくための方法はいくつかあります。それぞれの方法に違う良さがあるので、企業の特性によって使い分けることがインナーブランディングの成功に欠かせないカギとなります。企業によってはすでに経営者と社員の信頼関係がある程度築けているところから、社員それぞれが自主的に仕事に取り組んでおり企業からの過剰な束縛を嫌う場合など、企業の背景は様々です。ここにインナーブランディングの手法をいくつか挙げますので、自社に取り入れるイメージを持ちながら読み進めてみてください。
社員へのアンケート
インナーブランディングの目的は、社員に自社を理解し、共感してもらうことにあります。そのため、今現在の社員がどの程度企業に理解を示しているか、あるいは思い入れがあるかどうかを知ることはインナーブランディングの施策検討においても活動における効果測定においても非常に重要な要素です。
社員に直接アンケートを行うことはインナーブランディングの方向性を決めるためにも活動の効果を知り、改善に活かすためにも役に立ちますが、アンケートの量や回答方式によってはすでに業務を抱えている社員にとっては負担と感じられることがあります。記述式の回答は必要最低限に抑え、効果を数値化し推移を見やすくするためにも選択式の回答を主体とするのが良いでしょう。
社員同士のワークショップ
社員の企業理解を深めるインナーブランディングですが、一方的に情報を発信するだけでは社員が自分ごととして捉えることは難しくなります。そこで、インナーブランディングを自分ごととして捉えて社員一人ひとりが自分自身の能力をどのように企業の中で生かし、キャリアを形成していくか、あるいは企業に対して当事者意識を持ってもらうために、社員同士が意見を交わし合えるワークショップを行う場合があります。
社員の意識が変わることが目的のインナーブランディング。社員が他人事のように活動をとらえられないよう、積極的に社員自身が考える機会を提供しましょう。
企業や社員に関する動画制作
社員に自社の魅力や活動、あるいは将来像について知ってもらうためのツールは社内報を始め多岐にわたりますが、その中でもとりわけ発信力や影響力が強いのが動画制作です。
文字だけでなく声や音、動きによって経営者の熱量や企業の将来像を立体的に伝えることができ、テレビCMのように視聴者側の感動や行動を促すことも可能です。ただし、YouTubeなどでも気軽に動画を配信できるようになったこの時代ですが、社員が必要としているメッセージを、社員が知りたい形で動画に落とし込み、動画の品質が非常に重要な要素になります。インナーブランディングに効果的に動画を取り入れる場合は、必要に応じて動画のプロに外部委託をすることをおすすめします。
インナーブランディングを失敗させない取り組み方
先ほどはインナーブランディングの具体的な手法を紹介しましたが、どの手法を取り入れるにしても企業の現状や将来像、あるいは社員の特性に合わせてインナーブランディングを進めていく必要があります。あくまでも社員の変化を促進するための活動である以上は、一方的な発信のみでは活動そのものの効果は生まれません。
ここでは、インナーブランディングを進めていく大きな流れをご紹介します。
長期的に取り組む
インナーブランディングの成功において最も重要なことですが、この活動は短期的に効果が可視化されるものではありません。社員に思いを伝え、理解し共感してもらい、社員一人ひとりの業務に対する見方を変えて主体性を醸成し、企業の将来像に沿った行動を日々してもらう、という大きな流れを作らなければなりません。
したがってインナーブランディングは効果の測定が難しく、活動そのものの方向性に迷うこともあります。社員から厳しい言葉を聞くこともあるかもしれません。ですが、その長く厳しい道のりの先に社員一人ひとりによって支えられた強い企業になっていくことを、インナーブランディングの担当者は心に刻んでおく必要があります。
正しいKPIやKGIの設定を行う
効果測定が難しいインナーブランディングだからこそ、活動の効果を数値化するための指標を設定することが非常に重要です。KGI(目標達成の指標)やKPI(目標を達成するための活動の評価指標)の設定にあたっては、①必ず定量的に計測できるものにする、②KPIの改善がKGIの改善につながるようにする、③インナーブランディングの施策によって改善可能なKPIであること、の3点を抑えておく必要があります。
定性的な観点も必要なインナーブランディングですが、やはり数値化することで担当者のモチベーションアップや活動の改善には非常に活用しやすい要素が生まれ、経営層に活動進捗を報告しやすいメリットもありますので、しっかり押さえておきましょう。
企業理念や方針を社員に押し付けない
社員から理解され、企業としての一体感を向上するためのインナーブランディングは、企業理念や将来像など、企業の考え方を社員に伝える活動が主体となります。ただし、社員の企業に対する思いや不満を差し置いて企業や経営者の考えに染まることを求めてはいけません。
社員一人ひとりの考え方や価値観があること、社員からの理解を得ることが最重要目的であることを念頭に置き、「分かってくれている」という感覚をまずは社員に与えることによって企業に対する理解も深まります。「理解してくれ」と押しつけがましい印象を与えることは避けるように、社員の言葉にも耳を傾けながら活動を進めましょう。
PDCAを回す
先ほど触れたように、インナーブランディングは長期にわたる活動です。実際に活動を行う中で得られる社員の反応を見ながら、行っていく施策の内容や作成する動画や文章において伝えるべき内容を改善していく必要があります。始めから完璧なインナーブランディングを行っていこうとするのではなく、活動一つ一つの中で得られる反応に目を向け、それにこたえようとする姿勢を持ち、活動の中で改善できる要素がないかどうか確認し、再度検討して修正し、また活動に活かしていくというPDCAサイクルを何度も回していきましょう。
社員の意見を取り入れる
社員が企業のことを適切に理解し自社を受け入れてもらうためには、社員が企業にどのような思いを持っているかを知る必要があります。アンケートを行うだけでなく、日々の業務中や社内で接するタイミングにおいて社員の意見に耳を傾けましょう。
地位のある社員だけでなく、社歴の浅い若い社員も含めて意見を吸い上げることは非常に重要ですが、若い社員は意見を言うことに抵抗を感じがちです。どんなアイデアや意見にも価値があり、インナーブランディングを達成するためにアイデアの選択肢を増やしておくことが非常に重要なのです。上司や経営者の威厳を見せることではなく、どんな社員も意見を出しやすい雰囲気を作ることそのものが、社員の居心地の良さや企業の理解にもつながります。
インナーブランディングでよくある質問
近年台頭してきたインナーブランディングを進めていく上では、担当者の経験が不足していることも多く、多くの壁を感じることや、進める方向性に迷うこともあるかもしれません。ここでは、そういった担当者の多くが持っている疑問にお答えしていきます。
自社だけで取り組める?
先ほどもお伝えした通り、インナーブランディングに関わる知識や経験を持っている社員が自社にいる可能性は非常に低いです。もちろん委託を行うにしても自社が主体となって進めていくべきですが、例えば企画部分のみなど、自社と外部委託をうまく使い分けて利用することによって柔軟にインナーブランディング施策の検討を行うことも可能です。
なお、シースリーフィルムでは、インナーブランディング全般のコンサルティングから動画作成をワンストップで行うことができ、確度の高い施策を行うことが可能となります。どの部分を委託するかまで相談に乗ってくれるので、一度問い合わせをしてみることをおすすめします。
費用はどれくらい必要?
企業規模や施策の内容、社内の現状や使えるリソースなどが異なるため、企業ごとにかかってくる費用は大きく異なります。
期間はどれくらいかかる?
こちらに関しても、企業規模などによって大きく異なります。いずれにしても長い期間を要する活動であることは変わりありませんが、例えばインナーブランディング用の社内向け動画を作成する、など施策の焦点が定まっている場合は比較的短期間で完了することが可能ですが、インナーブランディングの企画検討の段階にあり、インナーブランディング活動そのものの方向性も相談したいという場合は非常に長期にわたることが予想されます。
具体的にどんなことをすれば良いのかわからない
今回ご紹介したように、インナーブランディングは企業の将来像や現状、あるいは社員の特性に合わせた施策を打っていく必要があります。そのために入念な準備と情報収集や分析、ヒアリングが必要となり、一概にどの施策がいいのかは言い切れません。
また、すでにインナーブランディングの施策を行っている企業においても活動の成果が適切に測定できているかどうか、そしてそれを活動に活かしているかどうかに不安がある場合は、インナーブランディングをトータルでサポートできる外部に委託をするのがベターです。
すでに活動を行っている場合もこれからの場合も、方向性に迷う場合はインナーブランディングの知見が深い外注にまずは相談してみるのが良いでしょう。
インナーブランディングについてご検討される方へ
今回は、インナーブランディングに実際に取り組むにあたって使用できる手法や具体的な取り組みの進め方についてお伝えしてきました。インナーブランディングは企業に対して大きな影響力を持つがゆえに、難易度の高さを感じる場面が多く、目標達成にかかる期間も非常に長いものとなります。
企業の中でもインナーブランディングの進め方に深い知見がある社員を抱えている場合は非常に少ないため、確実に効果を得られるインナーブランディングを進めたい場合には外部に委託することをおすすめします。インナーブランディングの施策は自社で行うことも不可能ではありませんが、長期にわたる影響力の高い重要な活動だからこそ、中途半端にしないためにも投資をしておくのが安心材料となるでしょう。
委託先によってはコンサルが得意、イベントに強いなど、それぞれの強みがあるので、自社の課題や現状、あるいは目指す将来像や社風に合わせて相談先を選定すると良いでしょう。
シースリーフィルムは、テレビCM制作を核として培ってきたアイデアやクリエイティブの力を応用し、インナーブランディングを目的とした映像やデジタル施作などにも取り組んでいます。社員へのコミュニケーションに映像を用いることで、エンゲージメントを高める効果が期待できます。課題整理からコンテンツ制作までワンストップでサポートできるので、ぜひ相談してみてください。