企業の成長や安定的な経営に欠かせない取り組みとして、近年インナーブランディングが注目されています。インナーブランディングは、社内向けのブランディング活動を意味しますが「そもそもインナーブランディングってうちの会社に必要?」という部分に確信を持てていない人も少なくないのでは。
とくに中小企業の場合「ブランドディングが必要なのは大手だけなのでは?」「自社のような小さな会社では、ブランドなんて作れない」と思ってしまうかもしれません。
しかし、インナーブランディングは中小企業にこそ重要な取り組みです。効果的な施策を実行すれば、経営や採用など複数の面でさまざまなメリットや効果をもたらします。
当記事では、インナーブランディングの基礎的な理解を深めつつ、なぜ中小企業にインナーブランディングが必要なのかを詳しく解説しています。
通して読んでいただくことで、中小企業がインナーブランディングを実践すべきである根拠がしっかりと理解できるはずです。実際の手法や、施策実行の注意点などもあわせてお伝えしているので、ぜひお役立てください。
インナーブランディングとは
インナーブランディングとは、企業の理念やビジョンなどを社員全体に浸透させる取り組みのことです。
ブランディングとは、一般的に顧客や取引先などの社外に向けて行うものというイメージを持っている方も少なくないでしょう。社外に向けた取り組みはアウターブランディング(エクスターナルブランディング)と呼ばれていますが、近年ではインナーブランディングこそが組織の垣根を支える重要な役割になると考えられるようになってきました。
企業が取り組む目的
インナーブランディングの目的は、社員に企業理念や企業価値に共感してもらうことです。
理念やビジョンなどを掲げていても、経営層やリーダーだけで共有されていては、組織はバラバラのまま。企業が志す姿勢、目指しているビジョンなどを社員一人ひとりが深く理解し、共感できれば、一人ひとりのモチベーションが上がります。
一人ひとりが能動的に仕事をするようになれば、企業全体のパワーが底上げされ、企業全体の成長や業績アップなどにつながっていくことも。
企業が社員に継続的で一貫したメッセージを発信することで、企業全体の士気が統一され組織の強い基盤が形成されます。インナーブランディングで、企業内のよい循環を作り出すことができれば、社外に向けた「アウターブランディング」としての効果も発揮するようになるでしょう。
インナーブランディングの取り組みは、企業の業態や規模を問わず、組織作りにおいて重要度の高い取り組みなのです。
もたらす効果とは
インナーブランディングの取り組みがうまくいけば、企業にはさまざまなプラスの効果が生まれます。
- 現場社員の意識改革
- 社員エンゲージメントの向上
- 社員ロイヤルティの向上
- 業務効率化
- 品質向上
- 離職率の低下
- 定着率の向上
インナーブランディングで重要なのは、企業の価値観に社員一人ひとりが共感できるようにすること。理念やビジョンへの共感は、社員エンゲージメントやロイヤルティの向上につながります。
社員の愛社精神が高まれば、業務効率化や品質向上などそれぞれの業務に対する試行錯誤や工夫も生まれ始めるでしょう。
また、人材の流動化が激しい現代では、社員の離職防止や定着率の向上などへの対策も必須です。このような人事施策の面でも、インナーブランディングは効果的。「この会社で働き続けたい」「この会社の一員であることに誇りを感じる」という感覚を得てもらうことができれば、優秀な人材の確保や離職率の低下などにもプラスの影響を与えます。
具体的な手法とは
インナーブランディングの取り組みを実践するにあたり、どんな手法を取り入れるかがとても重要なポイントになります。企業ブランドを確立していたとしても、それが社員一人ひとりにしっかり伝わっていなければ意味を成しません。
インナーブランディングの具体的手法としては、次のような方法が広く使われています。
- 社内ポスター
- 社内報
- 動画配信
- 社内ポータルサイト
- 社内SNS
- クレドカード
- ミーティング
- 勉強会やセミナー
- 社内イベント
社内報やポスターの制作などは古くから使われてきた手法ですが、近年では動画配信や社内ポータルサイト、SNSなどネットやデジタルツールを活用したインナーブランディング施策が広まりつつあります。
インナーブランディングの手法を選ぶときに重視したいのは、コンテンツを通じて社員同士のコミュニケーションが生まれるようなものにすることです。制作したコンテンツや取り組みが、社員の興味を惹くものでないと施策の効果は期待できません。
社員同士がコンテンツの内容に触れ、話題にしたり、意見交換ができたりするようなものが理想です。効果的なコンテンツが制作できれば、自分が働く会社への興味関心が強まり、理解や共感が生まれ、愛着心が強まっていくという流れを作ることができます。
動画制作や社内Webツールの活用などは、社内で独自に制作するのが難しいケースも多いでしょう。内製化が難しい部分は、外部のサービスを利用してリソースの負担を軽減したり、クオリティの担保をする必要があることも念頭に置いておくとよいです。
インナーブランディングが中小企業にとって重要な理由
インナーブランディングは業態や事業規模に関わらず必要な意識ですが、中小企業はとくに注力すべきといわれています。中小企業がブランディングを強化すべきな理由としては、次のような雇用に関する背景が大きく関わっています。
①雇用の大きな変化
元々、インナーブランディングは海外で生まれた取り組みです。人材の流動化が激しい海外企業では、以前からインナーブランディングへの意識が強くありました。
しかし近年では、日本国内でも「企業が終身雇用を維持するのは難しい」という認識が広まってきています。日本は長らく終身雇用制度が一般的でしたが、人材の流動化が加速し始めたため、海外に遅れをとる形でインナーブランディングが広まってきたという背景があります。
とくに、中小企業は人材の確保がこれまで以上に難しくなるでしょう。(株)リクルートワークス研究所が発表している「ワークス大卒求人倍率の調査結果」では、中小企業への就業を希望する若者が、10年連続で実際の求人数を大幅に下回っているという現状が見てとれます。
福利厚生や給料など、よりよい労働条件で働くための転職も今や当たり前。加えて「その会社で自分は何ができるか」という、意義や主体性も重視して職場を選ぶ時代になってきています。中小企業こそ、自社にしかないブランド価値を確立し、優秀な人材を確保していく策をとる必要があるのです。
②離職防止につながる
中小企業では、離職率の低下が課題になっているケースもあるでしょう。特定の分野に特化した事業を行う中小企業は、慢性的な人手不足に陥りやすい傾向にあります。それに加えて、中小企業では、大企業に比べて社員が不安を抱えたり、不満を抱いたりする要素が多くなってしまうのも事実です。
たとえば、給料や福利厚生など条件面への不満や、会社の将来性への不安、携われる業務の選択肢が狭いなどといった理由で、社員が他社に流れやすくなります。
そこで重要なのが、社員エンゲージメントの向上です。社員が自社に対して愛着を持ったり「自分がこの会社でできること」を明確にできたりすれば、離職率は低下し、人材の定着度はアップするでしょう。
中小企業こそ、唯一無二の企業ブランドを作り、社内に浸透させ「この会社でなければならない」ブランド価値を確立させることのメリットは大きいと言えます。
ただし、特定の社員をやめさせないための短期的な対策を場当たり的に行うのは逆効果になることがあります。社員全体のエンゲージメント向上を意識し、長期的なプロジェクトで進めるインナーブランディングが効果的です。
③求める人材が採用できる
中小企業やベンチャー企業では、採用のミスマッチが起こりやすいのも大きな問題点とされています。中小やベンチャーでは、新卒や若い世代の人材を積極的に採用したい意志があるにも関わらず、それを上手く伝えることができていない現状があります。また、どのような人材が必要なのかを、内部の社員や経営層が理解できていない…というケースも。
インナーブランディングに取り組み、自社が目指すべきビジョンを理解する社員が増えると「どのような人材が必要か」という採用基準がより明確になります。採用担当者の主観的判断ではなく、企業全体にとって必要な人材をきちんと見分けられるようになるのもメリットです。
インナーブランディングは、社内で働く社員に向けた啓蒙活動ではありますが、実際は採用活動にも応用可能なのです。たとえば、インナーブランディング用に作成した動画を、会社説明会や企業のコーポレートサイトでも活用すれば、これまでよりも会社の魅力が外部の就職希望者に伝わりやすくなるでしょう。
また、会社に愛着心を持っている社員が自ら企業の活動や製品に関する情報発信をするような機会も増えます。知人や家族に自社の求人情報を紹介するリファラル採用につながることも。
このようにインナーブランディングは、新たな人材採用の面でもプラスの循環を作り出せる可能性があるのです。
インナーブランディングを実施する上での注意点
インナーブランディングは中小企業にとって必要性が高いということをお伝えしてきましたが、ここで注意しておきたいことが2つあります。
インナーブランディングに限らず、漠然と進行するプロジェクトはうまくいきません。効果が見込める施策を、計画的に進めることが重要です。
ここでは、中小企業のインナーブランディングにおける注意点を2つお伝えします。
効果が出るまで時間がかかる
インナーブランディングは、長期的な施策であることを理解しておきましょう。一度きりの施策実行で目に見える効果が出ることはまずないと考えてください。年単位での進行を目安にし、結果を焦らないことが重要です。
「企業理念やビジョンが社員に浸透したかどうか」というのは目に見えにくいものです。そのため、効果が出ているのかどうかはっきりわからないままフェードアウトしてしまう例もあります。
このような状態を避けるためには、インナーブランディングの効果測定を行うことも大切です。組織サーベイやeNPSなど、インナーブランディングに最適な手法で調査を行うことが推奨されています。仮説・検証・改善のサイクルを回していくことが重要です。
また、インナーブランディングは「ここまでやれば終了」というラインが定まっているものではありません。会社が存続している限り、続けていくものであることも忘れないでください。効果測定と改善を長期的に続けるには、継続しやすい施策を選ぶことも重要です。
価値観の共有を求めすぎない
インナーブランディングを進めるなかでは、企業の理念やビジョンに共感できない社員や、取り組みに対して拒否反応を示す者が出てくることも考えられます。
ここで経営層やリーダーがインナーブランディングにこだわりすぎると、賛同しない社員を差別したり、排除したりするような体制になりかねません。場合によっては、経営層が価値観の共有を求めすぎてしまい、価値観の押しつけやパワハラといった悪い印象を与えて逆効果になるおそれもあります。
インナーブランディングでは、あくまでも自然に共感してくれる社員を増やすという考え方が大切です。考え方や感じ方は人それぞれであるという、多様性を尊重する意識も忘れないでください。
また、結果を急ぎすぎることが価値観の押しつけになってしまうこともあります。長期的な視点で取り組むこと、価値観の共有を求めすぎないという2点は相互に関与し合っていることを理解し、少しずつ社内に浸透させる方法を考えてみてください。
インナーブランディングについてご検討される方へ
インナーブランディングの基礎的な知識と、中小企業にとってのインナーブランディングの必要性をお伝えしました。インナーブランディングの施策は、社内で実践することも可能ですが、なかにはリソースや技術が不足してしまうこともあるでしょう。
近年、効果を上げている動画配信やデジタルツールを活用したインナーブランディング施策。企業の規模を問わず、動画・デジタルコンテンツを活用している企業は多数あります。コンテンツ作成のポイントは、社員が興味関心を示し、社員間で話題になるようなコンテンツにすることです。そのためには、一定のクオリティや企画やコピー、映像の構成などクリエイティブな視点や技術も欠かせません。
自社制作が難しい部分については、インナーブランディングの導入支援を行う外部の企業に相談することでよい結果に転じるかもしれません。
シースリーフィルムは、テレビCM制作を核として培ったアイデアやクリエイティブな力を応用し、インナーブランディング用の映像やデジタル施作などに取り組んでいます。
とくに映像制作は、クオリティが効果に大きく影響する手法です。「PR動画を作ってみたいがどこから始めればいいの?」「どんなことをアピールすればいいの?」などの疑問も一度ご相談ください。課題整理からコンテンツ制作までワンストップでサポートできるケースもございますので、ご検討中の方はお気軽にお問合せください。