インナーブランディングの取り組みが注目され「自社でも取り組みを強化すべきなのでは?」と検討中の担当者の方も多いことでしょう。インナーブランディングは、業務効率化や生産性の向上、離職防止などの効果があるとされています。
一方で「インナーブランディングとは何のために行うのか」という目的を明確化できていないと、施策の成果が見られなかったり、プロジェクトが失敗に終わったりするおそれもあります。
この記事では、インナーブランディングの「目的」について理解を深める内容をまとめています。ぜひ通してお読みいただき「自社にとって本当に必要なことは何か」「何から始めるべきか」といったインナーブランディングの道標のイメージを掴んでみてください。
インナーブランディングの目的
インナーブランディングの目的は、企業の理念や価値観を社員と共有し、社員一人ひとりに浸透させ、社員一人ひとりが企業理念に基づいた行動とは何か、自主的に判断し、主体的に行動できるようになることです。
強い組織を作るためには、企業全体が同じ方向を向き、同じ目的に向かって進んでいく必要があります。そのためにまずは、企業が掲げる理念やビジョンを社員に正しく理解してもらうこと、そして共感してもらうことが必要です。
このような企業理念の浸透を実現させるための施策や手法、目標設定などの具体的取り組みは、インナーブランディングの一部です。
主体性とは、自分の意思や判断によって、自らの責任で行動する姿勢。社員一人ひとりが自らの判断で、進んで仕事に取り組むようになるため、企業全体のパワーが底上げされます。相乗効果によって、業務効率化や生産性の向上、離職率の低下などさまざまな効果が期待できます。
しかし企業活動においては、主体的に行動することだけが求められているわけではありません。社員の行動基準が企業理念に則っているかどうかが重要です。
主体性のある社員は、従業員エンゲージメントが高いという特徴があります。エンゲージメントは「双方向の結びつき」を意味する言葉で、就業員エンゲージメントは社員から企業に対しての心緒や態度を表します。
従業員エンゲージメントを高めるには、社員が企業の理念を正しく理解していること、またそれに共感していることが重要。理解と共感は前提条件ともいえるもっとも重要な要素であり、この前提条件が揃うことで「貢献意欲」も生まれるようになります。
従業員エンゲージメントは、理解・信頼・貢献意欲の3つのポイントが揃うことで高まります。従業員エンゲージメントの高い社員をより多く増やしていくことが、結果的に「強い組織」を形成していくのです。
目的を達成するために必要なこと
インナーブランディングで重要になるのが「目的」と「目標」の違いを明確にすることです。
どのような分野においても、目的と目標は混同しやすいもの。両者を混同してしまうと、本当に必要なことが見えなくなるおそれがあるので、この違いをしっかり理解しておきましょう。
まず、目的は抽象的なもので、取り組みが目指す最終地点です。たとえば「常に最高のサービスを提供してお客様に喜んでもらう」というビジョンは「目的」になります。
一方、目標は目的を達成するために行う具体的行動や指標です。細かく具体的な目標をひとつずつ着実にクリアしていくことで、最終的な「目的達成」を果たすことができます。
抽象的だからこそ目的は明確に
目的はビジョンであり抽象的なものですが、抽象的だからこそ明確にする必要があります。目的が明確でないと、社員は何をすればよいかわからず主体的な行動をとることができないためです。
たとえば「お客様に喜んでもらう」という目的を掲げた場合、それはどのようにして達成できるものでしょうか。なぜお客様に喜んでもらう必要があるのでしょうか。
このような部分が曖昧では、社員一人ひとりに主体的な行動を求めることはできません。目的は抽象的なものであるとはいえ、漠然としすぎず、できる限り明解にする必要があるのです。
「常に最高のサービスを提供して、お客様に喜んでもらう」といったように、目的の輪郭をよりはっきりさせましょう。
明確な目的は「問いかけ」を生む
明確な目的を掲げると、必ず生まれるのは「問いかけ」です。人が意識的に行動を起こすときは、必ず問いかけが生まれています。
たとえば「〇月〇日までに企画書を完成させる」という日々のタスクにおいても「どこから着手するか?」「今日はどこまで仕上げるべきか?」という問いかけが自然に起こるでしょう。明確な目的をもつことによって「その目的のために今必要なことは何か?」という質問や、さまざまな角度からの質問が浮かび上がってくるのです。
このような問いは社員の主体性にも直結するため、明確な目的を掲げてそれを日々意識することが大切になります。
散歩と登山。どちらも「歩く」だが
目的を定める場合と、定めない場合には大きな成果の違いが生じます。
経営コンサルタントの小宮一慶さんの言葉に、このような言葉があります。
“散歩のついでに富士山に登った人はいない”
散歩と登山はどちらも同じように歩いていますが、散歩には目的がありません。しかし登山には「登頂」という目的があります。富士山登頂を達成した人は、散歩がてらに出かけたわけではありません。
富士山に登る人は、日程を決め、天気を調べ、荷物を準備して登山計画を立て、実行に移すでしょう。目的はその下層で必要な計画や目標にも影響を与えます。
同じ「歩く」という行為でも、明確な目的があるかないかで、その後もたらさせる結果や成果には雲泥の差が生まれることになるのです。
目的達成を阻害する要素は
目的達成を阻害する要素は、目的と目標の違いを正しく理解していないことだけでなく、上司から部下へのマイクロマネジメントも一因になっています。
まず、組織のトップやリーダーが目的と目標を正しく認識し、区別して考える必要があります。また、部下の主体性を育てるには、部下を信頼して任せる姿勢、否定や口出しをしないといった意識も重要です。
この点を踏まえ、インナーブランディングの目的達成を阻む要因をさらに深く考えてみましょう。
「今日の成果」は目的じゃない
日本の企業では「今日の成果」を目的化しやすい傾向にあります。今日の成果は目的達成のためのルートや手段のひとつに過ぎず、これを目的だと考えてしまえば本来の目的を果たすことはできません。
リーダーや上司が日々のタスクを目的化してしまうと、社員の業務報告に対して発破をかけたり、叱責したりということが起こります。すると社員も「上司に怒られないために仕事をする」「サボっていることがばれないようにする」という構造ができあがっていくのです。
明確な目的をしっかり共有できていれば、社員は自分のペースで日々のタスクにコミットすればよくなります。「何のために働いてもらうのか」「何のために働くか」を今一度考えることもインナーブランディングにおいて重要な振り返りとなります。
「自分ごと化」ができていない
社員の主体性ある行動は、企業側の働きがけだけではなく社員側の問題でもあります。企業側が真の目的を明確にしていても、社員それぞれが仕事における課題を自分ごととして捉えていない場合、インナーブランディングの阻害要素になります。
「自分ごと化」とは、当事者意識を持ち、自分の責任でものごとを考え、行動することです。社員側に「自分ごと化」の意識が芽生えていなければ、最終的な目的達成は成し得ません。そこで確認したいのは、社員一人ひとりが、それぞれの真の目的をもっているかということです。
社員が、それぞれの真の目的を持つためには、トップやリーダーとのコミュニケーションの活性化や、情報共有などが欠かせません。よって、社内コミュニケーションを促進しながら理念共有をしていく必要があるのです。
企業側に価値観の多様性を受け入れる準備はあるか
インナーブランディングのポイントは、理念の共有という企業の真の目的に加えて社員それぞれがもつ真の目的の多様性を、どれだけ受け入れるかにあります。
社員一人ひとりは、実に多様な価値観を持っています。価値観だけでなく、年代や立場、能力、家庭の事情などすべてにおいて違っているでしょう。近年では多様性を受け入れるダイバーシティ&インクルージョンの考え方も広まってきています。
このような一人ひとりの多様性を受け入れるためには、企業側の努力や姿勢が必要です。企業側に「社員目線を理解しよう」とする意識があれば、社員一人ひとりは自分の目的を達成しやすくなります。
個々の目的達成はモチベーションややりがいなどをもたらすため、結果的に企業の「理念の共有」に辿り着くことができるようになります。
目的を達成するするために
社員がインナーブランディングの必要性を理解し、取り組みを「自分ごと化」して考えられるようになれば、企業の目的達成への道筋ができます。
社員一人ひとりの主体性を引き出すこと。そのためには、一人ひとりが自分の仕事に対してどれだけ責任感や当事者意識を持つかが重要です。また、それによって仕事に自分の「オリジナリティ」や「持ち味」がどの程度反映されるかによって、自分ごと化のしやすさも変わります。
社員への権限移譲
社員が仕事を自分ごと化するには、社員に仕事の権限を移譲することが必要です。
トップやリーダーが、部下を信頼して判断を任せることができない限り、社員は仕事を自分ごと化できません。社員がどこまでの範囲に関わってよいのかを明確にした上で、そのなかで自由に仕事を進められる体制を作る必要があります。
インナーブランディングの一環にクレドを活用しているリッツ・カールトンの事例を見てみましょう。リッツ・カールトンでは、社員一人ひとりに1日2,000ドルの決裁権を与えています。お客様のためになることであれば、社員が自分の判断でサービスの内容や行動を決められるだけでなく、2,000ドルものお金を使用できるのです。
リッツ・カールトンのクレドには、理念に基づく仕事の基本が細かく記されています。一人ひとりにその基本が浸透していること、また理念に基づく行動であれば社員の判断で行動してよいという権限の移譲が、社員のオーナーシップを育てているのです。
明確で平等な人事評価基準
真の目的達成のためには、明確で平等な基準に基づいた人事評価を行うことも重要です。評価する側の主観が入らず、根拠や客観性のある人事評価は、社員のやる気につながります。
決めつけや想像などが混じった評価は主観的評価であり、社員のモチベーションを低下させるでしょう。社員たちの動きの中から何を抽出し、何にウエイトを置くか。そしてどのような基準で評価するかという人事評価の一連のプロセスにおいては主観を排除することは欠かせません。
人事評価に関しても、常に目的を見据えておくこと、手段を目的化しないことが重要です。明確で平等な評価基準を制定し直すことも、インナーブランディングの一環であるといえます。
インナーブランディングの目的を達成するために
インナーブランディングの目的を達成するには、ビジョンをイメージしやすい明確な言葉をスローガンやクレドなどに落とし込んで集約するのが効果的です。
目的やビジョンを掲げていても、その内容を社員がイメージできなかったり、日々の業務内で忘れてしまうようでは意味を成しません。
ここからは、企業の目的やビジョンを社員に浸透させるのに効果的な方法を紹介します。
一方的なトップダウンはNG
目的やビジョンの浸透は、一方的なトップダウンの発信では大きな効果は期待できません。トップの意向を現場社員が徹底する「上意下達」の状態では、トップと現場の認識にズレが生じたり、現場に不満が溜まりやすくなります。
そこで、トップと現場の橋渡し役となるツールの活用が効果的です。
- 社内広報
- 社内Webサイト
- 社内SNS
このように、双方向のコミュニケーションを活性化できる手法やツールを導入することで、風通しの良い社内体制を整えやすくなります。とくにWebツールはリアルタイムでの情報共有ができるため、社内の情報伝達のスピードが早くなり業務効率化にも役立ちます。
インナーブランディング施策では、トップダウンとボトムアップの両方をバランスよく織り交ぜていくことが必要です。両者のハブとなるツールを積極的に取り入れてみましょう。
目的への道標となる動画活用も効果的
企業理念や行動指針を社員に正しく理解してもらうこと、またそのイメージを掴んでもらうためには、インナーブランディング動画が効果的です。
- インナーブランディングがなぜ必要なのか
- インナーブランディングで企業が何を目指したいのか
インナーブランディングに関する道標やストーリーは、動画を使って五感に訴えるのが近道といえます。
動画はテキスト資料に比べて情報量が多く、一度にたくさんのメッセージを届けることができます。また、映像、音声、テキストなど複数の効果を使うことによって、トップが伝えたいメッセージを表現する幅も広がります。
また、時間を拘束されない、短時間で理解しやすいといった特徴は社員にとってもメリットがあるため、トップと現場の両方にとって有効な手段です。
クオリティが高い動画はさらに効果的
効果的なインナーブランディング動画には、一定のクオリティが必要です。クオリティの低い動画では、ブランドを表現することも、社員の心を掴むのは困難でしょう。
また、自社でハイクオリティな動画を制作するのは難しいですが、外部発注すれば質の高い動画を作成することができます。動画のクオリティが上がれば、会社側が発信するメッセージを社員に浸透させやすくなります。
プロに動画制作を依頼すれば、撮影から編集まで一貫して進めることが可能です。専門的な知識が必要な撮影や編集の準備も、全て任せられます。
さらに広告映像で実績のあるプロに依頼すれば、企画の立案から広告映像のノウハウを活かした動画を作成することも可能です。自社の人間では気づけない自社の魅力を発見し、引き出してくれることもあります。
外部企業へ制作を依頼する場合は、課題整理から動画制作、納品までワンストップで対応できる会社がおすすめです。
インナーブランディングを検討される方へ
インナーブランディングを検討中の方は、外部の支援企業に相談してみるのも良い方法です。近年ではインナーブランディングの支援を行う企業が増えてきています。
企業によって、コンサルが得意、イベントに強いなどの強みがあるので、自社の課題やステージに合わせて相談先を選んでみてください。
シースリーフィルムでは、インナーブランディング動画の制作を請け負っております。テレビCM制作を核として培ってきたアイデアやクリエイティブの力を応用し、インナーブランディングを目的とした映像やデジタル施作などにも取り組んでいます。
スローガンやクレドの浸透、社内コミュニケーションなどに映像を用いることで、エンゲージメントを高める効果が期待できます。
課題整理からコンテンツ制作までワンストップでサポートいたしますので、ぜひご相談ください。